10月18日の調査と「ドブガイ」の話
みなさんこんにちは。スタッフの上地です。
今年度は高安地域周辺の生物多様性を把握するための生物相調査を行っています。10月18日に行ったこの調査で、大きな発見がありました!
今回見つかったのは、ミナミタガイという淡水二枚貝です。
ニッポンバラタナゴが「ドブガイ」に産卵することはよく知られていますが、実は「ドブガイ」という名前はため池等に棲む大型二枚貝の総称として使われています(ちなみに標準和名のドブガイは大陸に分布する種と対応しています)。一昔前まではドブガイという1つの種として認識されていましたが、最近の研究でこの中にいくつかの種(属レベルで異なる)が含まれることが分かってきました。そして、今年出版された論文で西日本に生息するタガイ属の1種が、新種として記載されました。これがミナミタガイです。
現在ニッポンバラタナゴの保護池には、イシガイとヌマガイが生息しています。このうち、ヌマガイのことを「ドブガイ」と呼んでいました。今回は高安地域周辺に昔から生息している在来の「ドブガイ」を探し出そうというのが生物相調査の1つの目的でした。
高安地域のため池群には元々「細長いドブガイ」が生息していたと聞きます。一部は博物館や高等学校に標本が保管されており、保護池のヌマガイに比べて明らかに細長い見た目をしています。この特徴は、近畿地方に生息するドブガイの仲間ではミナミタガイに一致します。一方でヌマガイは丸っこい見た目をしています。下の写真で見比べて見ましょう。
私たちは5年ほど前から高安地域周辺のミナミタガイを探し始め(本格的に始めたのは今年度からですが)、これまでに計4ヶ所で見つけました。
最初に見つけたのは2015年で、保護池の上流にあるため池で哺乳類に食い散らかされた大量の殻を発見しました。ただ、このため池では生きた個体が見つからず、その後は殻すら見られなくなりました。
次が今年に入ってからで、NPOスタッフの横川さん(ヨコちゃん)が山頂から大量の殻を見つけてきてくれました。ただ、この場所は完全に干上がっており、草原化していたようです。
その後、8月10日に横川さんと山頂の別のため池でようやくミナミタガイの生きた個体を見つけました!しかし、この池は奈良県側に位置しており、さらに個体数も少なかったことから、ここから持ち出して保護池に再導入するのは不適当と思われます。
そして10月18日、ついに保護池の上流にあるため池でミナミタガイを発見しました!
しかも生きた個体がそこそこ見つかりました。感無量です。高安地域の在来ドブガイを次世代に残す希望が見えました。
現在、保護池に高安地域のミナミタガイを再導入することを検討しています。
また、高安地域には「第3のドブガイ」がいる可能性があるので、引き続き探索を進めます。
もし何か情報をお持ちでしたら、NPOまたはきんぱくにお寄せください!!