第7章 集団の変化を調べる
これは縦軸に個体数をとって、横軸に大きさをとって、採った個体を全部体長に分け、1匹、2匹、3匹と積み上げていくとこういう体長分布というのがつくれます。これをひと月ずつ順番に並べていくと、徐々にピ-クがここからここへ伸びてきているのがわかってきます。だから毎月魚をとる。貝を採るでもいいですから、そのサイズを測ってこういう分布をつくると必ず左から右へ順番に動いていき、一ヶ月ごとに集団の体長、大きさが数値に出て、サイズの変化がわかります。
これはニッポンバラタナゴのものです。明確に顕れているとはいえませんが、ラインを見ていただければ大体わかると思います。
ニッポンバラタナゴの繁殖期が大体5月から8月であると予想できます。そして1年間経った次の5月までに大体20から30mmぐらいの大きさになっていく。こういうふうにデ-タをつくりあげていきます。
これはヨシノボリのものです。ヨシノボリの場合は明確にでていて、集団が右のほうへ移動していますので、サイズが次第に大きくなって、また新しい個体群が現れてきた様子がわかります。こういう体長分布を利用して、いろんな生物の集団の変化というのを表わす方法があります。
貝を採って、貝の中にバラタナゴの卵が何個入っているかとか、あるいはヨシノボリを採って、ヨシノボリのヒレを顕微鏡でみますと貝の幼生が何個ついているか、生徒達が調べたものです。これでみていきますと、ヨシノボリへの貝の幼生の付着数ですが、1月、2月、3月、4月これらの月に貝の幼生がたくさんついています。ドブガイの産卵期が12月から5月ぐらいまでというのが定説になっていて、この時生徒たちが取ったデ-タも大体それに一致しています。
それからタナゴの方ですが、貝をあけて調べて見ますと6月、7月、8月、ここで大体ピ-クになっています。だからこの場合、タナゴの産卵期のピークは6月頃ということになります。今、僕が調べている池では4月になるともう産卵期に入って、長い時は10月ぐらいまで産卵しています。各池によって、状況によって異なります。
これはドブガイのサイズが1年間で、大体どのくらいになるかということを、順番に示したものです。一番上が始めで、88年3月には4cmぐらいだったのが、9月ですから半年間で、大体サイズでいうと3cmぐらい大きく移動してきています。
この図はドブガイの成長曲線です。ドブガイの殻は夏場グ―ッと伸びて、冬は伸びないですから、成長の間のラインがはいります。そのため、1年ごとの年輪が明確にでますのでドブガイを採ったら、太陽に照らしながら殻をみていくと何才か推定できます。
ニッポンバラタナゴの食性ですけれども、何を食べているかを調べました。実際貝から出てきた6mm、7mmぐらいの個体の胃内容あるいは消化管内容を調べてみますと、ワムシという動物性プランクトンがわりとはいっています。それで段々大きくなっていってどう変化するかというと動物性のプランクトンから緑藻という植物性プランクトンに変わっていきます。徐々に徐々に食べ物が変わってきているので、棲む場所も移動してきています。