ドビ流しについて
「ドビ流し」という言葉を聞いたことがありますか?
 ふだんあまり聞かない言葉だと思います。今回はこの「ドビ流し」についてお話したいと思います。
 むかし、多くの人々のくらしは今とちがって田んぼがあちこちにあり、田んぼにイネを植えて米をしゅうかくして生活していました。
 田んぼには多くの水がひつようで、とくに雨の少ない時に水をどうやって用意するかが大切でした。
 そこで、雨の少ないところではふった雨や川の水を「ため池」にためておくことで、田んぼにひつような水を用意していました。
 底樋 ところが「ため池」は、長い間おいておくとかれ葉など植物や池の中で死んでしまった動物がくさり、ヘドロになって底にたまってしまいます。
「ため池」にじゅうぶん水をたくわえるためには、池にたまったヘドロをそうじしなくてはなりません。
 ため池」にはそうじをするために、お風呂のせんと同じように底樋(そこひ)とよばれるせんがつけられています。
この底樋(そこひ)をぬいて、たまったヘドロを水といっしょに池の外へ流していました。
 また、流されたヘドロは田畑に入れて「ひりょう」にしたりしていました。
 この作業のことを高安の人は「ドビ流し」とよんでいます。
 
底樋を抜いたところ
ここで、「「ドビ流し」をするとため池の生き物たちはみんな流れてしまう」と思うかも知れません。
 しかし、どんなに水をぬいてもため池の生き物をみんな流してしまうことはありません。かならず池の水やどろは少しのこってしまうからです。
池のそうじが終わるとまた水をたくわえます。このときの水はそうじをする前のため池の水にくらべるととてもきれいです。
 このきれいになった水とヘドロのぬけたため池が、少しだけのこった生き物たちにとって、とてもよい生活の場所となります。
 そうして、その少しの生き物はまたドンドンふえて行きます。
 むかしの人はため池の生き物のために、わざわざ「ドビ流し」をしてはいませんでした。
 しかし、人間が「ため池」をそうじすることが、ため池の生き物にとってもよいことになっていたことはまちがいありません。 
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