大阪教育大学紀要 第V部門 第52巻 第1号 29〜40頁(2003年9月)     ニッポンバラタナゴの遺伝的変異性と亜種間交雑に関する研究        長田芳和*・片山めぐみ・田部雅昭                福原修−・加納義彦        *理科教育講座・理科専攻卒業・梅花学園・清風学園                  (平成15年3月31日 受付)  八尾市内の溜他の1個体群と北九州佐賀県内の2河川および福岡県内の溜他の合計4個体群につい て,ニッポンバラタナゴの遺伝的差異を調べるためにアイソザイム分析を行った。北九州産では八尾 市産より集団内の変異性が大きく,地域による差異も認められた。北九州産のうち川に生息する個体 群は八尾市溜池産との間に遺伝的差異が大きいのに対し,溜他の個体群は八尾市産との間に遺伝的に 類似性が高かった。地域による遺伝的差異には地理的隔離が,他方溜池産の類似性には近親交配によ る遺伝的均一性が関与しているものと考えられた。さらに,八尾市内の18池についてニッポンバラタ ナゴの分布調査と腹鰭前縁の白色部と側線有孔鱗の観察及びアイソザイム分析を行った。八尾市にお けるニッポンバラタナゴ個体市内の遺伝的変異性は著しく小さく,また溜池間の遺伝的な差異も極め て少なかった。アイソザイム分析と外部形態の観察の結果,少なくとも7池に八尾市型ニッポンバラ タナゴ純系が生息し,少なくとも6池に雑種化が起こっているものとみられた。また,5池について は白色部あるいは有孔鱗をもつ若干の個体が存在していたため,さらに調査が必要である。ニッポン バラタナゴ個体群へのタイリクバラタナゴあるいは亜種間交雑個体の混入による遺伝的撹乱の程度の 時間的変化は,混入する個体の数と雑種化の強さに影響されるものと考えられる。 キーワード:バラタナゴ,亜種間雑種,遺伝的撹乱,アイソザイム